同級生データ一覧を作っていた
我ながら気持ちが悪いと思うけど、高校生のときにやっていたことがある。
春。新しいクラスが発表されると、真新しいノートを一冊用意する。
ノートに新しいクラスメイト全員の名前を書く。出席番号順に書いてゆく。
名前と名前の間は10行ほどの間隔をとってある。
このスペースを、数ヶ月かけて各人のパーソナルデータで埋めてゆく。
出身の中学校。
部活は何をやっているのか。
誰と仲が良いのか。
わかったことからどんどん書いてゆく。
クラスメイトが立ち話をしていたら、会話の内容を盗み聴きしてはノートに書く。
そして。
ときどきノートを読み返して書いてある情報を頭にたたき込む。
クラスメイトの田中くんが南中出身で、陸上部で高跳びをやっていて、渡辺くんと幼なじみで、将棋が強いらしい。そんな情報はすべて頭に入っているのだ。
田中くんとはまだ一度も話したことがないのに。
おお。
おのれのことながら気持ちが悪い。書きながらゾクゾクしてきた。
どう考えても他人との距離の取り方がわからない人間だ。
しかるべき病名をつけてもらえるやつかも。保険証用意しなくちゃ。
席替えのたびにクラス全員の座席表を記録して、自宅の机に置いていた。
自宅の机の前で教室でのふるまい方をシミュレーションしていたのだ。
おお。なんて不安定な人格なんだ。鳥肌が立ってきた。
親が知ったら「うちの子大丈夫かしら」と神主さんに相談するタイプのやつだ。
そこそこ友人たちと仲良くやれていたと自分では思っていたけど、はたしてちゃんと人付き合いできていたのだろうか。今になって不安になってきた。
まあ思春期って誰しもそんなことしちゃうよね。
思春期特有のよくあることさ。
と己を慰めた後で、「スマホの電話帳の備考欄」や「もらった名刺の余白」を、その人のパーソナルデータで埋め尽くしている自分に気づく。
いい神主さんがいたら紹介していただきたい。