これはおたくの店のためを思って言うんだけど

書店で働いていたときはいろんなクレームを受けたことがあるけど、

 

「これはおたくの店のためを思って言うんだけど……」

って前置き付きの意見は、ことごとく独りよがりの愚にもつかないものだった。

それおまえしか得しないじゃん、って意見がほとんどだった。

身勝手なことが自分でも薄々わかってるからそういう前置きをつけちゃうんだろうね。

だって100%企業側に落ち度があるとき、たとえばレストランで注文したのと違う料理が出てきたときには「これはおたくの店のためを思って言うけど……」なんて言わんでしょ。

 

逆に「私の個人的な意見だからどうこうしろってことじゃないんだけど……」

という意見は、なるほどお客様はそんなふうに考えていたのか、と傾聴に値するものが多かった。

 

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「クレームは企業の財産だ」「クレームは企業が成長するチャンスだ」という話を耳にする。

事実だと思う。

お金を払ってでもお客様の生の声を手に入れたいと思っている企業は多い。

でもそれは企業が言うことであって、クレームを入れる側が言うことではない。「お客様は神様です」と同じだ。

 

 

本屋で「〇〇って本どこにある?」と聞いてくれる人は、すごくいいお客さんだった。

問い合わせのおかげで

「話題になっている本なのに置いていない」

「置いているのにお客さんに見つけられない(=配置がわかりづらい)」

といった問題点がわかる。

「テレビで紹介されてたよ」なんて情報を教えてくれる人もいて、すごくありがたかった。

(大きな書店に置いてある検索機はそんな情報入手の機会を逃しているわけで、もったいないなと思う。コストカットにはなるけれど)

 

 

 

消費者の「こう思う」は、プラスもマイナスも含めて企業にどんどん伝えたらいいと思う。

ぼくは、外食でおいしいと思った料理に対しては、会計時になるべく「〇〇がおいしかったです」と言うようにしている(逆は言わない。そもそも舌がばかなので何食べてもまずいと思わない)。

 

でも「こう改善して!」は大きなお世話だと思う。それは企業側が考えることだ。

 

誰にとってもいい提案なんてものはない(あるならとっくにやってる)。

ある人にとってのメリットが他の人にとってはデメリットになる。

満足している人は何の声も上げないことがほとんどだから、クレームを受けて何かを変えると、それまで満足していた人が不利益を被るかもしれない。

 

企業がやるべきは、要望をそのまま形にすることではなく、各方面の利害を考えて便益を最大化することだ。

そのためには一部の人を切り捨てたってかまわない。

 

 

 

「加工食品に虫が入っていた!」みたいな明らかな過失の指摘は別にして、

「こういう表現は傷つくからやめてほしい」みたいなご意見・ご要望は、すべて「 ※ 個人の感想です。」という但し書きをつけて聞くぐらいでちょうどいい。

「そうかー、そう思う人もいるのかー」とほどほどに聞き流すぐらいでいいと思う。

 

 

CMをつくったのにクレームに過剰に反応して放送を中止した、なんて話を聞くと「思考放棄しているな」と思う。

 

 もちろんいろんな事情を考えて中止にしてるんだろうけど、公表する理由として

「不快だというご意見があったから」

ってのはちょっと無責任すぎやしないかと思う。

 

「中止によって損なわれるお客様の満足を差し引いたとしても放送を続けることによるデメリットのほうが大きいと総合的に判断したから」

という理由を発表する世の中であってほしい。

 

クレームを受けてCMを放送中止しちゃう企業のためを思って言うんだけどね(※ 個人の感想です)。